
「企業家精神」や「革新」という言葉は、すでに長い間使われてきた。その時代に合った企業家精神、そしてその時代が予測する未来の企業家精神は、時代ごとに異なる定義がされ、変化してきたし、これからもそうであろう。
「革新」とは、古い風習、慣習、組織、方法などを完全に変えて新しくすることを意味する。 「創造的破壊(Creative Destruction)」と「革新」という言葉のうち、前者は肯定的なイメージと否定的なイメージが組み合わさった矛盾した印象を与える。
しかし、「創造的破壊」と「革新」は同じビジョンを示す言葉であり、相互補完的な関係を持ち、特定のテーマについて合理的な説明を可能にする概念である。

ヨーゼフ・アロイス・シュンペーター(Joseph Alois Schumpeter, 1883~1950)はオーストリア出身の経済学者であり、ウィーン学派の主要な人物であった。ナチスから逃れるためにアメリカへ亡命し、その後、世界的に著名な経済学者としての地位を確立した。1942年にシュンペーターは、「創造的破壊(Creative Destruction)」が経済発展の原動力であると主張した。マルクス経済学の再解釈の結果、シュンペーターは創造的破壊、つまり「既存の技術体系を打ち壊し、予想外の新たな技術体系を築くプロセス」であると定義した。
シュンペーターは、技術革新のために特許制度が必要であると考えた。彼は、特許制度が発明者の独占的地位を制度的に強化することで技術革新を促進し、経済成長をもたらす経済政策の原動力になると主張した。特許の権利は天賦の権利や自然権といった論理に基づき、特定の個人の所有が否定できないものとされるが、その制度の具体化や統合が人類(特に先進国)の政治的・政策的な需要によって進められてきた側面も無視できないことを考慮しなければならない。
現在、大企業は産業における独占権の行使を長引かせるために、独占期間の延長を目的としたさまざまな戦略を取っているように見える。その結果、新規参入者を排除し、個人発明者や中小企業による技術革新が妨げられる可能性がある。特許制度は単に発明者の利益を保護するものではなく、技術の普及を促進し、新たな技術革新を生み出す役割も担っているが、その機会は必ずしも均等ではないように思われる。当然、その機会が均等であるべきかどうかも議論の対象である。
また、特定の化学分野では、機械工学の分野よりも発明の技術的情報が容易に解析できるという主張もある。これは、完成品を購入して分析する技術が日々進歩しているためである。もし、技術の普及を促進するという特許制度の目的が、特許以外の方法でも達成可能であるならば、果たして情報公開の対価として独占権という強大な権利を与えることが妥当なのか、再考する必要があるだろう。さらに、特許明細書が技術公開の対価として実際にどの程度実施可能な技術を提供しているのかという論争は続いており、それゆえに特許制度そのものに対する疑問は今後も尽きることなく続いていくだろうし、続いていかなければならない。
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